シンボリクリスエス |
過去に引退レースを鮮やかに飾った名馬は何頭かいました。しかし引退レースで後続に9馬身差もの大差を付け、圧倒的力の違いを見せ付けてターフを去った馬は、後にも先にもシンボリクリスエスただ1頭だけではないでしょうか。 藤沢厩舎で岡部騎乗。1番人気になって当たり前のこのコンビで迎えたデビュー戦。しかし以外にも単勝6.5倍の4番人気。しかし540キロの巨漢馬ゆえ、藤沢調教師は使いながら仕上げていこう、そういう思いもあってか、調教でも目立った動きがなかった事が人気に反映していた事も確かでした。そして迎えたレースでは痛恨の出遅れ。新馬戦ではよくある光景。そしてこのまま負けていくのも普通の出来事でした。しかしほとんど仕上がっていなかったにもかかわらず、シンボリクリスエスは直線で新馬とは思えない末脚を披露し、アサクサキニナルをクビ差、差しきってデビュー戦を飾りました。陣営にとっては予想外のデビュー勝ちに、素質の高さを思い知らされました。 新馬戦で素質の高さを示したシンボリクリスエスでしたが、その後はセントポーリア賞(500万下)2着⇒ゆりかもめ賞(500万下)3着⇒3歳500万下3着と、中々勝ちきれませんでした。しかしこれは陣営にとって見れば、想定の範囲内。使いながら徐々に競馬を覚えていったシンボリクリスエス。さらに体も少しずつ出来上がっていき、調教の動きもデビュー当時とは比べ物にならないくらいになってきました。 そして皐月賞の1週間前に行なわれた山吹賞(500万下)でようやく2勝目を上げたシンボリクリスエス。当然皐月賞には間に合わない。去年から(外)にも条件を満たせば出走できる事となった日本ダービーを目指す事となり、ダービートライアル・青葉賞へ向かう事となりました。 この青葉賞では、急遽武豊とコンビを組み、日本ダービーの出走権を武豊に託した陣営。単勝2.2倍の1番人気。武豊騎乗もあってか、予想以上に人気になったシンボリクリスエス。しかし終わってみれば2着バンブーユベントスに2馬身1/2差付ける完勝。遂に目覚めたシンボリクリスエス。この日騎乗した武豊は、日本ダービーでは1番人気が確実なタニノギムレットの騎乗がすでに決まっており、自らの手で最高のライバルを作ってしまった事となりました。 そして迎えた日本ダービー。予想通りタニノギムレットが1番人気。シンボリクリスエスは皐月賞馬ノーリーズンに次ぐ3番人気での出走となりました。タニノギムレットは後方、シンボリクリスエスは中段からレースを進め直線に向かいました。しかしこの時点での能力は、圧倒的にタニノギムレットの方が上でした。シンボリクリスエスは直線、タニノギムレットに並ぶ間もなく差し切られ2着敗戦。しかし陣営にとってみれば、まだまだ未完成な状態でこの結果なら、秋以降は大いに楽しめる、そー期待を抱かせる内容でした。 夏を休養に充てたシンボリクリスエス。秋は神戸新聞杯から始動。単勝2.1倍の1番人気に応え、皐月賞馬のノーリーズンを2馬身1/2差付ける快勝。期待通りに成長しているシンボリクリスエス。そして陣営は菊花賞ではなく、天皇賞(秋)へ向かうと表明し、バブルガムフェロー以来の3歳載冠を目指す事となりました。 東京競馬場が改装工事の為、中山競馬場で行なわれたこの年の天皇賞(秋)。シンボリクリスエスは単勝6.5倍の3番人気。しかしシンボリクリスエスは初めての古馬との対戦にもまったく動じず、中段から堂々としたレース運び。直線に入るとしっかりとした脚取りで中山の急坂を駆け上がり、最後はナリタトップロードに迫られましたが、3/4馬身差凌ぎ、見事バブルガムフェロー以来、史上2頭目の3歳馬の天皇賞制覇となりました。 天皇賞(秋)で一気に頂点に立ったシンボリクリスエスは、王道を歩んでいく事となりました。日本のエースとしてジャパンカップに出走し、堂々の1番人気でレースを向かえました。しかし中段からレースを進めたシンボリクリスエスは、ファルブラヴ、サラファンの2頭の外国馬を最後まで交わす事が出来ず、僅差の3着敗戦。それでも内容は悲観するものではなく、予定通り有馬記念へ向かいました。 有馬記念では、デビューから6連勝で秋華賞、エリザベス女王杯を制した同期の最強牝馬、ファインモーションに1番人気は譲りましたが、レースではすでに貫禄すら漂うレースぶり。レースの上がりを1.2秒上回る34.6秒の末脚で2着タップダンスシチーに3/4差付ける快勝!着差以上に強い内容に、来年はシンボリクリスエスの年になる、そう誰もが確信する事となった有馬記念でした。 4歳になったシンボリクリスエスは、予定通り宝塚記念へぶっつけで出走。約半年以来にもかかわらず単勝2.1倍の1番人気に支持されたシンボリクリスエス。レースではいつものように中段からレースを進め、4コーナーでは早くも2番手まで上がり直線に向かいました。しかし伸びないシンボリクリスエス。最後はバッタリと脚が止まり、勝ったヒシミラクルから2馬身1/4差離された5着敗戦。この宝塚記念の結果次第では海外遠征のプランも持ち上がっていましたが、いくら休み明けとはいえ、この不甲斐ない敗戦に海外遠征のプランは消滅。秋は再び日本で走る事となりました。 宝塚記念後、再び休養に入ったシンボリクリスエス。陣営は天皇賞(秋)⇒ジャパンカップ⇒有馬記念の3戦で現役を引退すると表明。シンボリクリスエスのレースを見れるのも後3戦となってしまいました。そして約4ヶ月ぶりとなった天皇賞(秋)。宝塚記念の不甲斐ない5着敗戦、大外18番枠、東京競馬場の2000mは、スタート後すぐコーナーに入るため、外枠は明らかに不利など、残り3戦でシンボリクリスエスが敗れるとすればこの天皇賞(秋)。そう言われながらも単勝2.7倍の1番人気に支持されレースを迎えました。 レースは2番人気ローエングリーンがハイペースで飛ばす中、シンボリクリスエスは中段待機で直線に向かいました。直線に入ると、シンボリクリスエスの独壇場!上がり3ハロン33.6秒の末脚で、なんなく先行馬を捕らえると、楽々先頭でゴール板を駆け抜け、天皇賞(秋)連覇、GT4勝目を上げ、強いシンボリクリスエスが戻ってきました。 そして去年3着に敗れたジャパンカップ。しかしあいにくの天気で東京競馬場は重馬場。それでも単勝1.9倍の断然1番人気に推されたシンボリクリスエス。レースは4番人気タップダンスシチーが2番手を大きく離して逃げる。そしてそのまま直線に向かいました。直線に入ってもタップダンスシチーの脚色は衰えない。それどころかさらに2番手との差は広がる。シンボリクリスエスは中段からレースを進めましたが、重馬場にいつもの脚が使えない、歯がゆい思いで遥か前方のタップダンスシチーを見ることしか出来なかったシンボリクリスエス。結局タップダンスシチーが2着ザッツザプレンティに9馬身差を付ける歴史的圧勝。シンボリクリスエスは最後ネオユニヴァースを交わして3着に入るのがやっと。いくら重馬場とはいえ、シンボリクリスエスにとってみれば屈辱的な敗戦となりました。 ジャパンカップで屈辱的大敗を喫したシンボリクリスエス。残る有馬記念が引退レース。レース後には引退式も用意されていて、ジャパンカップの借りだけは返しておきたい。タップダンスシチーも出走してくる。負けられない引退レースが幕を開けました。 単勝2.6倍。断然の1番人気とは言えませんでしたが、良馬場なら負けない、陣営だけでなく、ファンも同じ思いでした。レースはザッツザプレンティが逃げ、タップダンスシチーは3番手、そしてシンボリクリスエスは中段からレースを進めました。レースが動いたのは3コーナー。シンボリクリスエスが早めに先行馬を捕まえに行きました。必死に抵抗するザッツザプレンティ、タップダンスシチー。しかしエンジンのかかり始めたシンボリクリスエスを止める事は出来ませんでした。4コーナー過ぎには早くも先頭に立ったシンボリクリスエス。直線に入ると、1頭別次元の脚で一方的に後続を引き離しにかかりました。完全な1人旅。もう勝利は確実。普通なら追うのを止めますが、鞍上ペリエは追うのを止める所か、さらにシンボリクリスエスの馬体に鞭を入れました。“目には目を、歯に歯を”、やられたらやり返す。結局2着リンカーンに9馬身差付ける大圧勝!ジャパンカップでタップダンスシチーに付けられた着差を再現して、己の力を誇示し、圧倒的力の違いを見せ付けたままターフを去る事となりました。 天皇賞(秋)2勝、有馬記念2勝、GT計4勝。そして引退レース、有馬記念で魅せた圧倒的パフォーマンス。もう1年現役を続けていれば、シンボリルドルフ、テイエムオペラオーのGT7勝を更新した可能性さえありました。しかしシンボリクリスエスには、その血を残していくという使命があります。その雄大な、そして漆黒の美しい馬体。シンボリクリスエスの子供には父が果たせなかったクラシック制覇のみならず、海外GT制覇の夢まで期待してしまうのは当然かもしれません。 |
シンボリクリスエス | |
生年月日 | 1999,1,21 |
性別 | 牡 |
毛色 | 黒鹿毛 |
生産地 | アメリカ |
生産者 | Takahiro Wada |
馬主 | シンボリ牧場 |
調教師 | 藤沢和雄 |
競争成績 | 15戦8勝 |
GT勝ち鞍 | 天皇賞秋(2回)・有馬記念(2回) |
獲得賞金 | 984,724,000円 |
レース名 | 年月日 | 競馬場 | 格 | 人気 | 着順 | 騎手 | 距離 | 馬場 | タイム | 着差 | 1着(2着)馬 |
新馬 | 2001/10/13 | 東京 | - | 4 | 1 | 岡部 | T1600 | 良 | 1.36.5 | 首 | (アサクサキニナル) |
セントポーリア賞 | 2002/1/27 | 東京 | 500 | 2 | 2 | 横山典 | T1800 | 不良 | 1.53.3 | 首 | タイムレスワールド |
ゆりかもめ賞 | 2/9 | 東京 | 500 | 1 | 3 | 横山典 | T2400 | 良 | 2.30.8 | 1.1/4馬身 | トウカイアロー |
500万下 | 3/10 | 中山 | 500 | 1 | 3 | 岡部 | T1800 | 良 | 1.48.0 | 3.1/2馬身 | マイネルリバティー |
山吹賞 | 4/6 | 中山 | 500 | 2 | 1 | 岡部 | T2200 | 良 | 2.14.3 | 1.3/4馬身 | (マイネルアムンゼン) |
青葉賞 | 4/27 | 東京 | GU | 1 | 1 | 武豊 | T2400 | 良 | 2.26.4 | 2.1/2馬身 | (バンブーユベントス) |
日本ダービー | 5/26 | 東京 | GT | 3 | 2 | 岡部 | T2400 | 良 | 2.26.2 | 1馬身 | タニノギムレット |
神戸新聞杯 | 9/22 | 阪神 | GU | 1 | 1 | 岡部 | T2000 | 良 | 1.59.1 | 2.1/2馬身 | (ノーリーズン) |
天皇賞秋 | 10/27 | 中山 | GT | 3 | 1 | 岡部 | T2000 | 良 | 1.58.5 | 3/4馬身 | (ナリタトップロード) |
ジャパンカップ | 11/24 | 中山 | GT | 1 | 3 | ペリエ | T2200 | 良 | 2.12.3 | 1/4馬身 | ファルブラヴ |
有馬記念 | 12/22 | 中山 | GT | 2 | 1 | ペリエ | T2500 | 稍重 | 2.32.6 | 1/2馬身 | (タップダンスシチー) |
宝塚記念 | 2003/6/29 | 阪神 | GT | 1 | 5 | デザーモ | T2200 | 良 | 2.12.3 | 2.1/4馬身 | ヒシミラクル |
天皇賞秋 | 11/2 | 東京 | GT | 1 | 1 | ペリエ | T2000 | 良 | 1.58.0 | 1.1/2馬身 | (ツルマルボーイ) |
ジャパンカップ | 11/30 | 東京 | GT | 1 | 3 | ペリエ | T2400 | 重 | 2.30.3 | 10馬身 | タップダンスシチー |
有馬記念 | 12/28 | 中山 | GT | 1 | 1 | ペリエ | T2500 | 良 | 2.30.5 | 9馬身 | (リンカーン) |
Kris S. 1977 / 黒鹿毛 |
Roberto 1969 / 鹿毛 |
Hail to Reason | Turn-to |
Nothirdchance | |||
Bramalea | Nashua | ||
Rarelea | |||
Sharp Queen 1965 / 鹿毛 |
Princequillo | Prince Rose | |
Cosquilla | |||
Bridgework | Occupy | ||
Feale Bridge | |||
Tee Kay 1991 / 黒鹿毛 |
Gold Meridian 1982 / 黒鹿毛 |
Seattle Slew | Bold Reasoning |
My Charmer | |||
Queen Louie | Crimson Satan | ||
Reagent | |||
Tri Argo 1982 / 黒鹿毛 |
Tri Jet | Jester | |
Haze | |||
Hail Proudly | Francis S. | ||
Spanglet |
シンボリクリスエス種牡馬成績 (代表産駒) | ||
代表産駒 | 性 | 主な勝ち鞍等 |
- | - | - |
シンボリクリスエス兄弟 (代表兄弟) | ||
兄弟 | 性 | 主な勝ち鞍等 |
- | - | - |
>> 歴代名馬物語 TOP |
>> All of サンデーサイレンス TOP |
「ナリタブライアン」「トウカイテイオー」「ミホノブルボン」「ライスシャワー」「ビワハヤヒデ」「サクラローレル」「マヤノトップガン」
「ホクトベガ」「サクラバクシンオー」「ノースフライト」「グラスワンダー」「エルコンドルパサー」「ヒシアマゾン」「エアグルーヴ」
「トロットサンダー」「フラワーパーク」「タイキシャトル」「フサイチコンコルド」「テイエムオペラオー」「クロフネ」「キングカメハメハ」
「フジキセキ」「ジェニュイン」「タヤスツヨシ」「マーベラスサンデー」「ダンスパートナー」「イシノサンデー」「バブルガムフェロー」「ダンスインザダーク」
「サイレンススズカ」「ステイゴールド」「スペシャルウィーク」「アドマイヤベガ」「スティンガー」「トゥザヴィクトリー」「エアシャカール」
「アグネスフライト」「チアズグレイス」「メジロベイリー」「アグネスタキオン」「マンハッタンカフェ」「ビリーヴ」「ゴールドアリュール」
「デュランダル」「ネオユニヴァース」「ゼンノロブロイ」「ピースオブワールド」「スティルインラブ」「アドマイヤグルーヴ」「ダイワメジャー」
「ダンスインザムード」「ダイワエルシエーロ」「ショウナンパントル」「アドマイヤマックス」「スズカマンボ」「ディープインパクト」
「ハットトリック」「オレハマッテルゼ」「ヘヴンリーロマンス」「エアメサイア」「フサイチパンドラ」
「フェブラリーステークス」「高松宮記念」「桜花賞」「皐月賞」「天皇賞(春)」「NHKマイルカップ」
「オークス」「日本ダービー」「安田記念」「宝塚記念」「スプリンターズステークス」「秋華賞」「菊花賞」
「天皇賞(秋)」「エリザベス女王杯」「マイルチャンピオンシップ」「ジャパンカップダート」「ジャパンカップ」
「阪神ジュベナイルフィリーズ」「朝日杯フューチュリティステークス」「有馬記念」
Copyright (C) 2005 All of サンデーサイレンス All Rights
Reserved.