クロフネ |
“ダービー開放元年”。2001年から日本ダービーが(外)にも条件を満たせば出走できるようになり、ダービー開放1年目から1頭の(外)が、歴史的快挙に挑みました。 京都:芝:1600m。10月のこの時期は素質馬が揃い、新馬戦ながらレベルの高いレースが繰り広げられます。ここに1頭の(外)もデビュー戦を迎えようとしていました。芦毛の馬体にもかかわらず名前はクロフネ。1854年、下田にペリー艦隊7隻が入港してきた、黒船来航。馬主にとってみればそれほど日本の競馬界に衝撃をもたらすサラブレットであると、確信して付けられた名前でした。素質馬が揃っている事もあって3番人気でデビュー戦を迎えたクロフネ。レースでは中段から鋭い脚を使いましたが2着惜敗。500キロを超える馬体、次はもっとよくなる。陣営の思惑通り2戦目は、単勝1.3倍の断然の1番人気に応え、2着マイネルエスケープに2馬身差のレコードで快勝し、毎年クラシックへの登竜門と言われているエリカ賞(500万下)へ向かいました。 クラシックを目指す内国産の素質馬が揃う中、単勝1.3倍の断然の1番人気に支持されたクロフネ。レースでも4番手追走から直線楽々抜け出し、2着ダイイチダンヒルに3馬身1/2差付け、2戦連続レコードで完勝!そして最初で最後、同期の怪物3頭が揃ったラジオたんぱ杯3歳ステークス(現・ラジオたんぱ杯2歳ステークス)へ向かいました。 アグネスタキオン、ジャングルポケット、そしてクロフネ。後にいずれもGTウイナーとなるこの3頭。しかし人気は、単勝1.4倍で圧倒的1番人気に推されたのはクロフネでした。レース前までは3強どころか、完全な1強ムードでした。しかし結果はアグネスタキオンが2着ジャングルポケットに2馬身1/2差付ける完勝、クロフネはアグネスタキオンに3馬身3/4差付けられた3着、完敗。初めて味わった力の差。さらにアグネスタキオンとは二度と対戦する事はなく、この借りを返す事は出来ませんでした。 年が明け、毎日杯から始動したクロフネ。単勝1.3倍。この人気に応えるようにクロフネは圧倒的パフォーマンスを見せ付けました。2番手を楽々追走したクロフネは、直線に入ると、完全な1人旅。結局2着コイントスに5馬身差付ける楽勝。タイムも1.58.6の好タイム。普通ならこのまま皐月賞へ向かいますが、(外)に皐月賞が開放されるのは翌年の話。皐月賞より一足先に(外)に開放される日本ダービーを目指す事となりました。 日本ダービーに出走できる外国産馬枠は僅か2頭。クロフネは毎日杯(GV)を勝っているとはいえ、まだまだ出走が確実な状況ではありませんでした。そこで京都新聞杯で重賞2勝目を上げ、日本ダービーに出走してくるんじゃないかと思われていました。しかし陣営が選んだレースはNHKマイルカップ。もしここで負ければ日本ダービー出走は夢となるかもしれない。それでも陣営はここで勝ち負け出来ないようでは、日本ダービーに仮に出走しても勝負にならない。マイルはクロフネには短いかもしれないが、あえて厳しい道を選び、クロフネの真価が問われる事となりました。 (外)ダービーと言われるNHKマイルカップ。デビュー戦以来のマイル戦となったクロフネ。このレースから名手・武豊とコンビを組み、蓋を開けてみれば単勝1.2倍の断然1番人気。日本ダービーを盛り上げる為にもクロフネには強い競馬をしてほしい、ファンの思いも1つでした。そして迎えたレース。しかしクロフネは若干の出遅れ、さらに久々のマイル戦に序盤は置かれ気味で後方からの競馬を余儀なくされました。それでも3コーナーあたりからエンジンがかかり始め、直線に入ると末脚が一気に爆発!全馬をまとめて差し切り、GT制覇、日本ダービーへの出走権を確実なものにしました。 そして迎えた日本ダービー。(外)として初めて出走したクロフネ。単勝3.0倍の2番人気。1番人気は皐月賞3着で、ラジオたんぱ杯3歳ステークスで先着を許したジャングルポケットで単勝2.3倍。それでも陣営は、NHKマイルカップよりは明らかにレースはしやすい。負けられない!そんな思いの中ダービー開放元年のレースは幕を開けました。 前日からの雨で重馬場でのレース。クロフネは後方からジャングルポケットをマークしながらレースを進め、3コーナーではジャングルポケットを交わして、直線に向かいました。ここからどんな競馬を見せてくれるのか、誰もが期待していましたが、伸びない。ジャングルポケットにも一気に交わされ、結局ジャングルポケットから6馬身離された5着惨敗。不甲斐ない敗戦。大跳びなクロフネには重馬場が予想以上に合わなかった。ローテーションが厳しかった。様々な憶測が飛び交いましたが、すべては言い訳。クロフネの評価は急降下しました。 夏を休養に充てたクロフネは神戸新聞杯から始動。このレースの結果次第で次のローテーションを決める事となりました。夏の上がり馬エアエミネムが単勝1.8倍の1番人気。単勝4.4倍、クロフネは離された2番人気でレースを迎えました。休み明けからか反応が悪く後方からの競馬となったクロフネ。それでも直線ではメンバー最速の上がり34.2秒で、勝ったエアエミネムから1/2馬身差の僅差3着。休み明けとしては内容は悪くない。しかしこのレースで賞金を加算する事が出来なかった為、当面の目標だった天皇賞(秋)には出走する事が出来ず、そこで陣営はダートを使ってみる事になりました。 ダート初戦は、ジャパンカップダートを目指す古馬達も集結してくる武蔵野ステークス(東京:ダート:1600m)。初めてのダート戦の為、厳しいレースが予想されました。レースは前半の1000m、57.7秒のハイペース。このハイペースをクロフネは楽々3番手で追走すると、直線に入ると、1頭だけ芝を走ってるかのような感じで、後続との差をグングン広げて行き、終わってみれば2着イーグルカフェに9馬身差付け、従来のレコードを1.2秒も上回る1.33.3の快レコードで楽勝。仕方なく使ったダート戦で、とんでもない勝ち方をしたクロフネ。武蔵野ステークス後、再び芝のGTに出走する事も考えられましたが、武蔵野ステークスで騎乗した武豊がジャパンカップダートへの出走を陣営に進言し、ジャパンカップダートへ向かう事となりました。 そして迎えたジャパンカップダート。単勝1.7倍の断然1番人気。この人気に応えるように、ここでも次元の違うパフォーマンスを見せ付けました。スタートで行き脚がつかなかったクロフネは後方からじっくりレースを進めました。そして3コーナー手前から、まったく馬なりのまま上がって行き、4コーナーでは早くも先頭に立ち、場内は騒然となりました。いくらなんでも仕掛けるのが早すぎる。しかし鞍上武豊はまったく手を動かしておらず、4コーナーで武豊は勝利を確信しました。直線に入ると完全な1人旅。後続馬との差を見る見る広げて行き、終わってみれば、2着ウイングアローに7馬身差付ける圧勝!従来のレコードを1.3秒更新する2戦連続の快レコードで、GT2勝目を上げると共に、世界最高賞金額のレース、ドバイワールドカップへと、夢は大きく広がりました。 しかしクロフネが海外で走る事はありませんでした。ジャパンカップダートの1ヵ月後、競走馬の不治の病“屈腱炎”を発症、そして早々と現役を引退、ターフを去る事となりました。10戦6勝、内レコード4回。期待通り日本の競馬界に衝撃を与え、そしてあっという間に去っていったクロフネ。子供たちには父の果たせなかった、クラシック制覇、海外制覇の期待がかかるのは当然かもしれません。 |
クロフネ | |
生年月日 | 1998,3,31 |
性別 | 牡 |
毛色 | 芦毛 |
生産地 | アメリカ |
生産者 | Nicholas M.Lotz |
馬主 | 金子真人 |
調教師 | 松田国英 |
競争成績 | 10戦6勝 |
GT勝ち鞍 | NHKマイルカップ・ジャパンカップダート |
獲得賞金 | 370,235,000円 |
レース名 | 年月日 | 競馬場 | 格 | 人気 | 着順 | 騎手 | 距離 | 馬場 | タイム | 着差 | 1着(2着)馬 |
新馬 | 2000/10/14 | 京都 | - | 3 | 2 | 松永幹 | T1600 | 良 | 1.35.7 | 首 | エイシンスペンサー |
新馬 | 10/28 | 京都 | OP | 1 | 1 | 松永幹 | T2000 | 良 | R.2.00.7 | 2馬身 | (マイネルエスケープ) |
エリカ賞 | 12/3 | 阪神 | 500 | 1 | 1 | 松永幹 | T2000 | 良 | R.2.01.2 | 3.1/2馬身 | (ダイイチダンヒル) |
ラジオたんぱ杯3歳S | 12/23 | 阪神 | GV | 1 | 3 | 松永幹 | T2000 | 良 | 2.01.4 | 3.3/4馬身 | アグネスタキオン |
毎日杯 | 2001/3/24 | 阪神 | GV | 1 | 1 | 四位 | T2000 | 良 | 1.58.6 | 5馬身 | (コイントス) |
NHKマイルカップ | 5/6 | 東京 | GT | 1 | 1 | 武豊 | T1600 | 良 | 1.33.0 | 1/2馬身 | (グラスエイコウオー) |
日本ダービー | 5/27 | 東京 | GT | 2 | 5 | 武豊 | T2400 | 重 | 2.27.9 | 6馬身 | ジャングルポケット |
神戸新聞杯 | 9/23 | 阪神 | GU | 2 | 3 | 蛯名 | T2000 | 良 | 1.59.6 | 1/2馬身 | エアエミネム |
武蔵野S | 10/27 | 東京 | GV | 1 | 1 | 武豊 | D1600 | 良 | R.1.33.3 | 9馬身 | (イーグルカフェ) |
ジャパンカップダート | 11/24 | 東京 | GT | 1 | 1 | 武豊 | D2100 | 良 | R.2.05.9 | 7馬身 | (ウイングアロー) |
フレンチデピュティ French Deputy 1992 / 栗毛 |
Deputy Minister 1979 / 黒鹿毛 |
Vice Regent | Northern Dancer |
Victoria Regina | |||
Mint Copy | Bunty's Flight | ||
Shakney | |||
Mitterand 1981 / 鹿毛 |
Hold Your Peace | Speak John | |
Blue Moon | |||
Laredo Lass | Bold Ruler | ||
Fortunate Isle | |||
ブルーアヴェニュー Blue Avenue 1990 / 芦毛 |
Classic Go Go 1978 / 鹿毛 |
Pago Pago | Matrice |
Pompilia | |||
Classic Perfection | Never Bend | ||
Mira Femme | |||
Eliza Blue 1983 / 芦毛 |
Icecapade | Nearctic | |
Shenanigans | |||
Corella | Roberto | ||
Catania |
クロフネ種牡馬成績 (代表産駒) | ||
代表産駒 | 性 | 主な勝ち鞍等 |
- | - | - |
クロフネ兄弟 (代表兄弟) | ||
兄弟 | 性 | 主な勝ち鞍等 |
Bella Bellucci(全姉) | 牝 | アスタリタステークス |
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