タイキシャトル


タイキシャトル

すでに同期の内国産馬達は皐月賞を終え、日本ダービーへ向かおうとしていた時、日本競馬界を席巻する1頭の(外)が、デビュー戦を迎えました。東京:ダート:1600m。この未勝利戦、すでに勝ち上がり目前の馬が数頭いる中、初出走となったタイキシャトルは1番人気でデビュー戦を迎えました。経験馬達を相手にタイキシャトルは圧倒的パフォーマンスを見せ付けました。好スタートから道中は少しかかり気味、鞍上岡部が必死になだめる中、4コーナーでは早くも先頭に並びかけ直線に向かいました。直線に入っても岡部の手はほとんど動かず、最後の200mからようやく追い出すと、一瞬の内に後続を引き離し、2着アカシグリスンに4馬身差の楽勝。デビュー戦から素質の違いを見せ付けました。

デビュー戦を楽勝したタイキシャトルは、2戦目もダート戦。ここでも問題なく勝ち上がり、3戦目は始めての芝、菖蒲ステークス(OP)に向かいました。すでに日本ダービーも終わり、(外)馬達の春の大目標、NHKマイルカップも終わり、同期の有力馬達が休養に入るこの時期に、デビューが遅れたタイキシャトルは着々と、その牙城を固めていきました。初めての芝、NHKマイルカップ5着のオースミジェットも出走してきた為か、2番人気に甘んじたタイキシャトル、道中かかり気味に追走したタイキシャトルは、3コーナーでは早くも先頭に立ち、これでは直線もたないだろうと思われましたが、直線に入っても脚色は衰える事なく、あっさりOP特別を勝ち上がり、芝でもまったく問題ない事を証明しました。しかし続く菩提樹ステークスでは、圧倒的1番人気に推されながら、楽に逃げたテンザンストームを捕らえる事が出来ず、2着に敗れ、デビュー4戦目で初めて土が付き、そのまま秋に向けて休養に入りました。

秋は再びダート戦の、ユニコーンステークスから始動。春にデビューしたタイキシャトルは、まだそれほどの圧倒的パフォーマンスを見せ付けてはおらず、それほど注目を集めていた訳ではありませんでした。ここでも3番人気と、伏兵の1頭に過ぎませんでした。しかし+14キロとパワーアップしたタイキシャトルは、好位からなんなく抜け出し、2着ワシントンカラーに2馬身1/2差付ける楽勝。ダート界に“新星誕生”と騒がれ、このままダート路線を歩むのかと思われました。しかし陣営が選んだ次走はスワンステークス。マイルチャンピオンシップを目指す古馬達が、一同に集結するこの厳しいレースをあえて選択し、タイキシャトルの真価が問われる事となりました。

マイルチャンピオンシップの前哨戦だけあって、次のマイルチャンピオンシップでも人気を集めるであろうと思われる馬達が出走してきた中、タイキシャトルは2番人気に推され、レースを迎えました。レースは快速馬エイシンバーリンが快調に飛ばし、タイキシャトルは好位を追走し、直線に向かいました。直線に入るとタイキシャトルは、古馬達を一蹴し、一気にマイルチャンピオンシップの主役に躍り出ました。

そしてGT初出走となったマイルチャンピオンシップ。1番人気は同期で怪物と騒がれていたスピードワールドに譲りましたが、差のない2番人気で出走したタイキシャトル。レースは同期で桜花賞馬のキョウエイマーチがハイペースで飛ばし、タイキシャトルは4番手を追走し、直線に向かいました。さすがは桜花賞馬、中々ばてない。しかしその桜花賞馬をタイキシャトルは、まったく子供扱い。並ぶ間もなく一気に差し切り、あっさりとGT制覇、デビューから7ヶ月で一気に頂点に立ちました。

マイルチャンピオンシップ制覇後は、スプリンターズステークスへ向かったタイキシャトル。単勝1.9倍の断然の1番人気に支持されましたが、さすがに1200mのスプリント戦は、短いんじゃないかと思われていました。しかし前半の半マイル32.6秒のハイペースを4番手で難なく追走すると、直線も楽々抜け出し、2着スギノハヤカゼに1馬身3/4差付ける完勝。短距離GTを連覇し、タイキシャトル時代の幕開けとなりました。

年が明け、安田記念を目標に京王杯スプリングカップから始動したタイキシャトル。休み明けでもまったく問題なく、先輩のタイキブリザードのレコードを0.4秒上回る好タイムで制し、予定通り安田記念へ向かいました。

あいにくの天気で不良馬場で行なわれたこの年の安田記念。それでも単勝1.3倍の断然人気に推されたタイキシャトル。外国馬も参戦してきた中、いままで以上に厳しいレースが予想されましたが、終わってみれば2着オリエンタルエクスプレスに2馬身1/2差付ける圧勝!スピード決着でも、不良馬場でも問題なく力の違いを見せ付けたタイキシャトル。日本に敵はいない。おのずと陣営の目は海外に向けられ、夏にフランスに渡り、海外GT制覇を目指す事となりました。

陣営が狙いを定めたレースは、フランス:ドーヴィル競馬場で行なわれる、ジャックルマロワ賞(GT:芝:1600m)。この同じ地で、1週間前にシーキングザパールがモーリスドギース賞(GT:芝:1300m)を制していた事もあってか、日本馬の評価は高く、タイキシャトルは1番人気で出走する事となりました。

直線だけのマイル戦。日本では経験した事のないこのコース、未知の対戦相手。そんな状況下でもタイキシャトルはまったく動じませんでした。好スタートからいつものように好位を追走し、残り300mからは早くも先頭に立つと、世界の強豪を一蹴!2着のアマングメンに1/2差を付けて、一気に世界の頂点に立ちました。

ジャックルマロワ賞制覇後は、アメリカのブリーダーズカップ挑戦も考えられましたが、日程的に難しい事から断念。残りマイルチャンピオンシップと、スプリンターズステークスの2戦を走って引退する事が決まり、凱旋帰国となりました。

帰国したタイキシャトルは予定通りマイルチャンピオンシップに出走。当たり前のように単勝1.3倍の断然の1番人気に支持されたタイキシャトルは、いつものように好位からレースを進め、直線に入ると、逃げたキョウエイマーチをあっさり捕らえ、後は独走!まったく次元の違う走りで、2着ビッグサンデーに5馬身差の楽勝。京都競馬場は、歓声よりも、タイキシャトルのあまりの強さに、ため息のほうが多かったように感じました。

そして引退レースとなったスプリンターズステークス。レース後には引退式も行なわれる事となっており、タイキシャトルが負ける所など誰もが想像できませんでした。単勝支持率は1.1倍。銀行に預けるよりは、タイキシャトルに賭けた方がいい、そんな空気さえ漂っていました。レースでもいつも通りの競馬。まったく問題ない。4コーナーでは早くも先頭に並びかけ、「さー、今日はどれくらい後続を突き放すのか」と、誰もが思っていました。が、しかし、伸びない。いつもの脚が見られないタイキシャトル。それでも並ばれれば再び突き放してくれるはず。そんな期待も虚しく、タイキシャトルを徹底マークしていたマイネルラヴに交わされ、最後はシーキングザパールにまで差し切られ、3着敗戦。タイキシャトルは最後に、競馬に“絶対”はない事を身をもって教えてくれました。

種牡馬となったタイキシャトルは、初年度産駒からNHKマイルカップを制する、ウインクリューガーを輩出するなど、順風満帆なスタートを切り、サンデーサイレンス亡き後、同系統のタイキシャトルにかかる期待は当然かもしれません。



タイキシャトル
生年月日 1994,3,23
性別
毛色 栗毛
生産地 アメリカ
生産者 Taiki Farm
馬主 大樹ファーム
調教師 藤沢和雄
競争成績 中央12戦10勝・海外1戦1勝
GT勝ち鞍 マイルチャンピオンシップ(2回)・スプリンターズステークス
安田記念・ジャックルマロワ賞
獲得賞金 615,485,000円 / 1,000,000フラン

レース名 年月日 競馬場 人気 着順 騎手 距離 馬場 タイム 着差 1着(2着)馬
未勝利 1997/4/19 東京 - 1 1 岡部 D1600 1.39.0 4馬身 (アカシグリスン)
500万下 5/3 京都 500 1 1 岡部 D1200 1.12.2 1馬身 (サウンドカスケード)
菖蒲S 6/8 東京 OP 2 1 岡部 T1600 1.36.5 1.3/4馬身 (シンコウスプレンダ)
菩提樹S 7/6 阪神 OP 1 2 岡部 T1400 1.20.9 テンザンストーム
ユニコーンS 10/4 東京 GV 1 1 岡部 D1600 1.36.8 2.1/2馬身 (ワシントンカラー)
スワンS 10/25 京都 GU 3 1 横山典 T1400 1.20.7 3/4馬身 (スギノハヤカゼ)
マイルチャンピオンシップ 11/16 京都 GT 2 1 横山典 T1600 1.33.3 2.1/2馬身 (キョウエイマーチ)
スプリンターズステークス 12/14 中山 GT 1 1 岡部 T1200 1.07.8 1.3/4馬身 (スギノハヤカゼ)
京王杯スプリングC 1998/5/16 東京 GU 1 1 岡部 T1400 1.20.1 1.1/2馬身 (オースミタイクーン)
安田記念 6/14 東京 GT 1 1 岡部 T1600 不良 1.37.5 2.1/2馬身 (オリエンタルエクスプレス)
ジャックルマロワ賞 8/16 ドーヴィル GT 1 1 岡部 T1600 1.37.4 1/2馬身 (Among Men)
マイルチャンピオンシップ 11/22 京都 GT 1 1 岡部 T1600 1.33.3 5馬身 ビッグサンデー
スプリンターズステークス 12/20 中山 GT 1 3 岡部 T1200 1.08.6 マイネルラヴ

Devil's Bag


1981 / 黒鹿毛
Halo

1969 / 黒鹿毛
Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Cosmah Cosmic Bomb
Almahmoud
Ballade

1972 / 黒鹿毛
Herbager Vandale
Flagette
Miss Swapsco Cohoes
Soaring
ウェルシュマフィン

Welsh Muffin


1987 / 鹿毛
Caerleon

1980 / 鹿毛
Nijinsky Northern Dancer
Flaming Page
Foreseer Round Table
Regal Gleam
Muffitys

1982 / 鹿毛
Thatch Forli
Thong
Contrail Roan Rocket
Azurine


タイキシャトル種牡馬成績 (代表産駒)
代表産駒 主な勝ち鞍等
ウインクリューガー NHkマイルカップ・アーリントンカップ
ゴールデンキャスト セントウルステークス
テイエムリキサン 朝日杯フューチュリティステークス(3着)
メイショウボーラー フェブラリーステークス
デイリー杯2歳ステークス小倉2歳S・ガーネットS・根岸S
ウイングレット スイトピーステークス

タイキシャトル兄弟 (代表兄弟)
兄弟 主な勝ち鞍等
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