ナリタブライアン |
“シャドーロール”この馬防具の名前を競馬ファンに浸透させたのは、史上5頭目の3冠馬ナリタブライアンでした。 デビュー前から1歳上の半兄ビワハヤヒデ(菊花賞・天皇賞(春)・宝塚記念)の下という事から注目を集めていたナリタブライアン。デビュー2戦目で勝ち上がったナリタブライアンでしたが、その後は、函館3歳ステークス6着⇒きんもくせい特別1着⇒デイリー杯3歳ステークス3着と、まだまだレースぶりは安定せず、6戦目の京都3歳ステークスから陣営はレースに集中しないナリタブライアンにシャドーロールを付けて出走させました。 初めてシャドーロールを付けて臨んだ京都3歳ステークスで3馬身差の快勝。シャドーロールはナリタブライアンにとって切っても切り離せないアイテムとなっていきました。 すでにデビューして6戦も走ったナリタブライアンでしたが、陣営は暮れの朝日杯3歳ステークス(現・朝日杯フューチュリティステークス)にナリタブライアンを出走させました。 単勝3.9倍、僅差の1番人気で出走したナリタブライアンは中段から素質の違いを見せ付ける走りで、2着フィールドボンバーに3馬身差を付ける圧勝。兄ビワハヤヒデに続きGTウイナーとなりました。しかしこの頃のナリタブライアンはまだ、「ビワハヤヒデの弟」の印象が強く、ビワハヤヒデほどの信頼感もありませんでした。 年が明け、共同通信杯から始動したナリタブライアンは2着アイネスサウザーに4馬身差、続くスプリングステークスでは2着フジノマッケンオーに3馬身1/2差。完全に本格化したナリタブライアンは、皐月賞でも単勝1.6倍の断然人気に支持され、レースを迎えました。 弥生賞を制したサクラエイコウオーが逃げる中、ナリタブライアンは中段から徐々に進出し、直線に向かいました。直線に入ると、先行馬を一気に交わし、後は後続を完封。2着サクラスーパーオーに3馬身1/2差付ける快勝、皐月賞レコードとなる1分59秒0の好タイムで、1冠目の皐月賞を楽々制しました。 日本ダービーへは皐月賞から直行で進み、単勝は1.2倍。その人気に応えるようにナリタブライアンは直線で衝撃的なパフォーマンスを見せ付けました。直線各馬が凌ぎを削る中、ナリタブライアンただ1頭だけが大外をぶん廻り、見る見るうちに後続を突き放し、終わってみれば5馬身差の大楽勝。「内でごちゃつくぐらいなら、大外を廻ったほうがいい」コンビを組む南井はレース前から不利さえなければ勝てる、その自身は確信に変わり、秋に向けて休養に入りました。 秋は京都新聞杯から始動したナリタブライアン。何と単勝は1.0倍の元返し。しかし新星スターマンの前にクビ差届かず2着で、若干の不安を抱えながら、史上5頭目の偉業、3冠に挑みました。 そして迎えた菊花賞。しかしこの菊花賞の前週の天皇賞(秋)で、兄のビワハヤヒデが5着に敗れ、レース後屈腱炎が発覚し、そのまま引退。ナリタブライアンにとっては兄ビワハヤヒデのぶんまで期待を背負って走る事となりました。 中段からじっくりレースを進めたナリタブライアン。しかし直線に入り先頭に立つと、1頭次元の違う走りで、グングン差を広げて行き、2着ヤシマソブリンに付けた着差は“7馬身”。ドキドキ、ヒヤヒヤ、そんな感情も抱かせない圧倒的な強さ。実況では「弟は大丈夫だー」と、ビワハヤヒデのぶんまで走ったナリタブライアンを賞嘆しました。 “3馬身1/2”、“5馬身”、そして“7馬身”と、走る度に着差を広げて行き、シンボリルドルフ以来10年ぶり、史上5頭目の3冠馬の称号を得たナリタブライアンは、暮れの有馬記念でも圧倒手的な強さでGT5勝目を上げ、来春に向けて休養に入りました。 古馬になったナリタブライアンは阪神大賞典から始動し、2度目の単勝1.0倍という人気に応え7馬身差の楽勝で、天皇賞(春)へ向かう予定でした。しかしその後、股関節炎を発症し、春を全休、秋に向けて休養に入りました。 股関節炎は完全に直ったのか?半信半疑の中、復帰初戦に天皇賞(秋)を選択した陣営。半年以上の休養明けがGT、そんな厳しい現実の中ファンは1番人気でナリタブライアンを迎え入れました。 いつも通り中段からレースを進め、直線に向かったナリタブライアン。さーここからどんな末脚を見せてくれるのか?と、誰もが思いましたが、伸びない、けがの南井に代わってコンビを組んだ的場の鞭にもまったく反応せず、デビュー以来最悪の12着惨敗。ここからナリタブライアンの苦闘が始まりました。 次のジャパンカップでは天才武豊と新たにコンビを組み、復活に期待がかかりましたが、6着敗戦。続く有馬記念では直線見せ場を作りましたが、そこからは伸びず4着。しかし1戦1戦内容は少しずつですが良くなり、来年以降の復活に手応えを感じ休養に入りました。 そして競馬史に残るマッチレースとなった阪神大賞典。単勝2倍の1番人気に前年の菊花賞、有馬記念を制し、年度代表馬に選ばれたマヤノトップガン。ナリタブライアンは単勝2.1倍の僅差の2番人気でレースを迎えました。 レースは4コーナー過ぎから早くも2頭が並び、直線に向かいました。内マヤノトップガン、外ナリタブライアン。直線に入っても2頭まったく譲らず、完全に2頭のマッチレース。そして最後の最後アタマ抜け出したのがナリタブライアンでした。復活!前年の年度代表馬マヤノトップガンを退けた事で完全にナリタブライアンは復活しました。 そして天皇賞(春)に向かったナリタブライアン。ファンはナリタブライアンの完全復活をこの目で見たいと、単勝1.7倍でナリタブライアンを後押ししました。この天皇賞(春)でもマヤノトップガンとの一騎打ちの様相で、騎乗した武豊もマヤノトップガン1頭を徹底マークし、直線に向かいました。 直線に入り、マヤノトップガンを交わしたナリタブライアンは完全復活のゴール目指しましたが、遅れてきた大物サクラローレルに並ぶ間もなく交わされ2着。そしてこのまま次走は宝塚記念に向かうのかと思われましたが、日程的に空きすぎるという事から、この年新設された高松宮杯(現・高松宮記念・中京・芝・1200m)に出走する事となりました。 レース体系の整備されている現代の競馬で、この出走は物議を醸しましたが、管理する大久保正陽調教師は、「強い馬ならどんな距離でも強い」と、コメント。周囲の雑音をよそにレースを迎えました。 ヒシアケボノに次ぐ2番人気で出走したナリタブライアン。前半は久々のスプリント戦に戸惑ったのか、置かれ気味。それでも直線に入ると、勝ったフラワーパークに次ぐ2番目の上がり34.2秒で4着まで追い上げました。 その後宝塚記念に向けて調整中でしたが、競走馬の不治の病「屈腱炎」を発症。それでも陣営は現役にこだわり、療養に努めましたが、ナリタブライアンがターフに戻ってくる事はなく、そのまま現役を引退する事となりました。 種牡馬として期待されたナリタブライアンでしたが、1998年6月17日腸閉塞を発症。手術で一旦は快方しましたが、同年9月27日に胃破裂を発症。そのまま回復の見込みがないという事で安楽死処分となりました。僅か2世代を残しこの世を去ったナリタブライアン。その少ない産駒から、父ナリタブライアンに迫れる子供が現れる事を期待せずにはいられません。 |
ナリタブライアン | |
生年月日 | 1991,5,3 |
性別 | 牡 |
毛色 | 黒鹿毛 |
生産地 | 北海道新冠 |
生産者 | 早田牧場新冠支場 |
馬主 | 山路秀則 |
調教師 | 大久保正陽 |
競争成績 | 21戦12勝 |
GT勝ち鞍 | 朝日杯3歳ステークス・皐月賞・日本ダービー・菊花賞・有馬記念 |
獲得賞金 | 1,026,916,000円 |
レース名 | 年月日 | 競馬場 | 格 | 人気 | 着順 | 騎手 | 距離 | 馬場 | タイム | 着差 | 1着(2着)馬 |
新馬 | 1993/8/15 | 函館 | - | 2 | 2 | 南井 | T1200 | 重 | 1.13.7 | 1.1/4馬身 | ロングユニコーン |
新馬 | 8/29 | 函館 | - | 1 | 1 | 南井 | T1200 | 重 | 1.12.8 | 9馬身 | (ジンライ) |
函館3歳S | 9/26 | 函館 | GV | 2 | 6 | 南井 | T1200 | 重 | 1.14.9 | 4.3/4馬身 | マリーゴッド |
きんもくせい特別 | 10/24 | 福島 | 500 | 1 | 1 | 清水 | T1700 | 良 | 1.43.1 | 3馬身 | (ランセット) |
デイリー杯3歳S | 11/6 | 京都 | GU | 2 | 3 | 南井 | T1600 | 良 | 1.22.7 | 4馬身 | ボディーガード |
京都3歳S | 11/21 | 京都 | OP | 1 | 1 | 南井 | T1800 | 良 | R.1.47.8 | 3馬身 | (テイエムイナズマ) |
朝日杯3歳S | 12/12 | 中山 | GT | 1 | 1 | 南井 | T1600 | 良 | 1.34.4 | 3.1/2馬身 | (フィールドボンバー) |
共同通信杯4歳S | 1994/2/14 | 東京 | GV | 1 | 1 | 南井 | T1800 | 良 | 1.47.5 | 4馬身 | (アイネスサウザー) |
スプリングS | 3/27 | 中山 | GU | 1 | 1 | 南井 | T1800 | 良 | 1.49.1 | 3.1/2馬身 | (フジノマッケンオー) |
皐月賞 | 4/17 | 中山 | GT | 1 | 1 | 南井 | T2000 | 良 | R.1.59.0 | 3.1/2馬身 | (サクラスーパーオー) |
日本ダービー | 5/29 | 東京 | GT | 1 | 1 | 南井 | T2400 | 良 | 2.25.7 | 5馬身 | (エアダブリン) |
京都新聞杯 | 10/16 | 阪神 | GU | 1 | 2 | 南井 | T2200 | 良 | 2.12.2 | 首 | スターマン |
菊花賞 | 11/6 | 京都 | GT | 1 | 1 | 南井 | T3000 | 稍重 | R.3.04.6 | 7馬身 | (ヤシマソブリン) |
有馬記念 | 12/25 | 中山 | GT | 1 | 1 | 南井 | T2500 | 良 | 2.32.2 | 3馬身 | (ヒシアマゾン) |
阪神大賞典 | 1995/3/12 | 京都 | GU | 1 | 1 | 南井 | T3000 | 良 | 3.08.2 | 7馬身 | (ハギノリアルキング) |
天皇賞(秋) | 10/29 | 東京 | GT | 1 | 12 | 的場 | T2000 | 重 | 1.59.4 | 3馬身 | サクラチトセオー |
ジャパンカップ | 11/26 | 東京 | GT | 1 | 6 | 武豊 | T2400 | 良 | 2.25.3 | 4.1/2馬身 | ランド |
有馬記念 | 12/24 | 中山 | GT | 2 | 4 | 武豊 | T2500 | 良 | 2.34.1 | 3.1/4馬身 | マヤノトップガン |
阪神大賞典 | 1996/3/9 | 阪神 | GU | 2 | 1 | 武豊 | T3000 | 良 | 3.04.9 | 頭 | (マヤノトップガン) |
天皇賞(春) | 4/21 | 京都 | GT | 1 | 2 | 南井 | T3200 | 良 | 3.18.2 | 2.1/2馬身 | サクラローレル |
高松宮杯 | 5/19 | 中京 | GT | 2 | 4 | 武豊 | T1200 | 良 | 1.08.2 | 4.3/4馬身 | フラワーパーク |
ブライアンズタイム Brian's Time 1985 / 黒鹿毛 |
Roberto 1969 / 鹿毛 |
Hail to Reason | Turn-to |
Nothirdchance | |||
Bramalea | Nashua | ||
Rarelea | |||
Kelley's Day 1977 / 鹿毛 |
Graustark | Ribot | |
Flower Bowl | |||
Golden Trail | Hasty Road | ||
Sunny Vale | |||
パシフィカス Pacificus 1981 / 鹿毛 |
Northern Dancer 1961 / 鹿毛 |
Nearctic | Nearco |
Lady Angela | |||
Natalma | Native Dancer | ||
Almahmoud | |||
Pacific Princess 1973 / 鹿毛 |
Damascus | Sword Dancer | |
Kerala | |||
Fiji | Acropolis | ||
Riffi |
ナリタブライアン種牡馬成績 (代表産駒) | ||
代表産駒 | 性 | 主な勝ち鞍等 |
- | - | - |
- | - | - |
ナリタブライアン兄弟 (代表兄弟) | ||
兄弟 | 性 | 主な勝ち鞍等 |
ビワハヤヒデ(半兄) | 牡 | 菊花賞・天皇賞(春)・宝塚記念 |
ビワタケヒデ(全弟) | 牡 | ラジオたんぱ賞 |
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