エルコンドルパサー


エルコンドルパサー

凱旋門賞で2番人気。日本馬が世界最高峰のレースでこれほど人気を集めたのはエルコンドルパサーが最初で最後なのではないでしょうか。

後に、世界と堂々と渡り合う1頭のサラブレットは、デビュー戦からその素質をまざまざと見せ付けました。陣営が選んだデビュー戦は、東京:ダート:1600m。デビュー前から評判を集めていたエルコンドルパサーは当然のように1番人気で出走しました。しかしスタートで大きく出遅れたエルコンドルパサーは最後方からの競馬となり、4コーナーでもまだ最後方だったエルコンドルパサー。この時点では2戦目に期待しよう、そんな空気が流れていました。そんな周囲の心配をよそにエルコンドルパサーは、直線で自身のポテンシャルを思う存分見せ付けました。直線に入って鞍上・的場が軽く気合を入れると、1頭だけ芝を走ってるかのような桁違いの末脚で、一瞬にして全馬を交わすと、後は長い東京競馬場の直線を独走!2着マンダリンスターに7馬身、3着以下には3秒以上突き放す圧倒的な内容。この1頭の衝撃的なデビュー戦に、スタンドのどよめきは中々鳴り止みませんでした。

デビュー戦を圧勝したエルコンドルパサーは2戦目もダート戦で出走。ここでもデビュー戦同様、出遅れましたが、後続に9馬身差を付ける圧倒的内容。力が違いすぎる。そしていよいよ芝でどこまで走れるのか、共同通信杯で試される事となりました。

初めて芝での出走を予定していた共同通信杯。しかし前日からの降雪により、芝でのレースは全てダート戦に変更され、新馬戦同様、東京:ダート:1600mに条件が変更。当然のように単勝1.3倍と断然の1番人気での出走となりました。初めてまともにスタートを切ったエルコンドルパサーは、好位から抜け出すまったく危なげない競馬で、2着ハイパーナカヤマに2馬身差付ける完勝。3着以下には8馬身差を付けていたことからもエルコンドルパサーのダート適正の高さは明らかでした。

共同通信杯で芝のレースを試せなかったエルコンドルパサー。(外)はまだクラシック出走が出来なかった為、ニュージーランドT4歳ステークス(現・ニュージーランドT3歳ステークス)からNHKマイルカップへ向かうローテーションを組みました。

ニュージーランドT4歳ステークスで初めての芝での出走となりましたが、前日の雨で芝は重馬場。パンパンの良馬場とはいきませんでしたが、この初めての芝でもエルコンドルパサーの強さは桁違いでした。朝日杯3歳ステークス(現・朝日杯フューチュリティステークス)2着のマイネルラヴも出走してきて、本番さながらの好メンバーが揃いましたが、中段から一気に抜け出し、2着スギノキューティーに2馬身差を付け、重賞初制覇、前哨戦を制し、NHKマイルカップに堂々と向かいました。

本来ならこのNHKマイルカップで断然の1番人気に推されるはずだったグラスワンダーが骨折で戦線離脱。代わって断然の1番人気に支持されたのは当然エルコンドルパサーでした。初めてのパンパンの良馬場でしたが、好スタートから楽々好位を追走すると、直線も楽に抜け出し快勝!デビューから5連勝、いずれも完勝で、あっさりとGTのタイトルを手に入れました。

夏を休養に充てたエルコンドルパサー。秋は毎日王冠から始動し、ここで歴史的名馬2頭と最初で最後の対決となりました。数々の名馬に騎乗してきた武豊をして「1番馬」と言わしめたサイレンススズカ。同期、同じ(外)で朝日杯3歳ステークス(現・朝日杯フューチュリティステークス)で衝撃的なレースを演じたグラスワンダー。そしてエルコンドルパサー。この夢の対決に東京競馬場もGT以上の盛り上がり。人気はサイレンススズカが単勝1.4倍で断然の1番人気。グラスワンダーエルコンドルパサー、この2頭の主戦ジョッキーだった的場均がグラスワンダーを選択した事からか、2番人気は3.7倍でグラスワンダーエルコンドルパサーが5.3倍で3番人気でレースを迎えました。

レースは予定通りサイレンススズカが前半の1000mを57.7秒で飛ばすハイペース。エルコンドルパサーは中段からレースを進め、直線に向かいました。直線に入ってもサイレンススズカの脚色は衰えず、後続に影をも踏ませぬ逃走劇。そのサイレンススズカに唯一迫ったのがエルコンドルパサーでした。メンバー最速の上がりで2着を確保。おそらくこの頃のサイレンススズカは地上最強!そのサイレンススズカには2馬身1/2差離されましたが、3着には5馬身差を付け、エルコンドルパサー自身も素質の高さを見せ付けました。

毎日王冠後は、マイル路線ではなくジャパンカップを選択した陣営。あえて厳しい道を選び、エルコンドルパサーの真価が問われる事となりました。

そして迎えたジャパンカップ。エルコンドルパサーが(外)の為出走できなかった日本ダービーを圧勝した、同期のスペシャルウィークも参戦し、さらに牝馬ながら天皇賞(秋)を制した歴史的牝馬、エアグルーヴ。外国馬に目玉がいなかった事もあり、この3頭が人気を分け合いました。1番人気はジャパンカップと同条件の日本ダービーを圧勝したスペシャルウィークで3.3倍。天皇賞馬エアグルーヴが4.6倍で続き、エルコンドルパサーは6倍で3番人気でレースを迎えました。

レースは、サイレントハンターが2番手を離して逃げる中、エルコンドルパサーは好スタートから好位を追走。エアグルーヴスペシャルウィークも中段よりやや前でレースを進め、勝負は長い東京競馬場の直線に持ち越されました。

大逃げしていたサイレントハンターの脚が一気に止まり、エルコンドルパサーが抜群の手応えで先頭に立ちました。そこにエアグルーヴスペシャルウィークが襲い掛かり、勝負は完全に3頭に絞られました。こうなると東京競馬場を得意としているエアグルーヴスペシャルウィークの2頭が有利かと思われました。しかしエルコンドルパサーはそんな2頭を相手に、圧倒的パフォーマンスを見せ付けました。

エアグルーヴスペシャルウィークの2頭に迫られたエルコンドルパサーでしたが、まだまだ余裕を残していました。蛯名のムチに素早く反応し、一気に差を広げ、終わってみれば2着エアグルーヴに2馬身1/2差付ける完勝!3歳馬(旧・4歳馬)として史上初めてジャパンカップを制すると共に、陣営はこれで日本には敵はいない事を確信。来年は凱旋門賞を目指し、ヨーロッパで走ると表明しました。

年が明け4月にフランスに渡ったエルコンドルパサー。海外初戦はイスパーン賞(ロンシャン:GT:芝:1850m)に決まり、現地で順調に調整も進み、エルコンドルパサーの海外挑戦が始まりました。

ジャパンカップを圧勝している事からか、1番人気でレースを迎えたエルコンドルパサー。スタートで少し出遅れたエルコンドルパサーでしたが、4コーナーでは先頭に並びかけ直線に入りました。直線完全に先頭に立ったエルコンドルパサーは、あっさり海外GT制覇かと思われましたが、最後クロコルージュの強襲にあい、僅差の2着に敗れました。しかし初戦という事を考えれば上出来で、2戦目に向けて弾みは付きました。

海外2戦目はサンクルー大賞(サンクルー:GT:芝:2400m)。日本では背負った事のない61キロの斤量を背負い、さらに前年の凱旋門賞馬サガミックス、前年のフランス・ダービー馬ドリームウェルも出走してきて、かなり苦戦を強いられると予想されました。しかしエルコンドルパサーの力は本物でした。スタートも決まり、好位からレースを進めると、直線では日本での走りを再現、2着に2馬身1/2差を付ける完勝!海外GT制覇を飾ると共に、この1戦で完全に、凱旋門賞でも戦える事を確信しました。

その後、体調を崩したエルコンドルパサーですが、予定通りフォア賞(ロンシャン:GU:芝:2400)から凱旋門賞へ向かう事となりました。凱旋門賞とまったく同じ条件のフォア賞では、日本では考えられない3頭立てでの競馬。直線ではボルジアと一騎打ちとなりましたが、最後はクビ差退け、体調も回復、万全の体制で凱旋門賞に向かいました。

そして迎えた凱旋門賞。この日同じロンシャンにはもう1頭の日本馬がいました、アグネスワールドです。そのアグネスワールドがアヴェイユ・ロンシャン賞(ロンシャン:GT:芝:1000m)を制し、エルコンドルパサー陣営にとっても力強い後押しとなりました。

そして今度はいよいよエルコンドルパサーの番となりました。ここまでの戦跡から堂々の2番人気に支持されたエルコンドルパサー。1番人気に推されたのはここまで7戦6勝、2着1回でフランスダービーとイタリアダービーを制していた3歳馬(旧・4歳馬)モンジューでした。この凱旋門賞は秋に行なわれ、この頃には3歳馬(旧・4歳馬)がすでに古馬と対等に戦えるようになる時期です。それでもこの凱旋門賞は古馬が59.5キロ、3歳馬は56キロと大きく斤量差がある事から、3歳馬有利と言われていました。

そんな中、世界最高峰の凱旋門賞は幕を開けました。しかしレースは意外な展開で始まりました。1番枠から好スタートを切ったエルコンドルパサーは、押し出されるようにハナを奪い、そのまま13頭を引き連れて、レースを引っ張りました。そしてそのまま先頭で直線に入ると、ここで一気に後続馬との差を広げ、凱旋門賞制覇が現実味を帯びてきました。残り200m、まだエルコンドルパサーが先頭、「頑張れ!」「逃げろ!」、日本からの応援が聞こえてきそうでした。しかし残り100mとなった所で1頭凄い脚で追い込んできました。1番人気のモンジューです。粘るエルコンドルパサー、突き放しに掛かるモンジュー。最後は2頭の一騎打ちとなりましたが、エルコンドルパサーは最後の最後でとうとう力尽きてしまいました。1/2馬身差。僅かな差でした。さらに3着クロコルージュには6馬身差を付けていたことからもエルコンドルパサーモンジューの力が抜けていた事は確かでした。こうしてエルコンドルパサーの挑戦は終わり、このままターフを去ることとなりました。

日本で先着を許したのは、スーパーホース、サイレンススズカのみ。同期のグラスワンダースペシャルウィークとは1度しか対戦しませんでしたが、いずれも大きく先着し、この近年稀に見るハイレベルと言われた1995年産まれの中でも、エルコンドルパサーの力が1枚抜けていたんじゃないかと言う意見にもうなずけます。果たしてこの3頭の子供たちから、父親を超えるサラブレットは現れるのか?もちろん父親を超える時、もちろんそれは世界の頂点に立つ事を意味します。



エルコンドルパサー
生年月日 1995,3,17
性別
毛色 黒鹿毛
生産地 アメリカ
生産者 T.ワタナベ
馬主 渡邊隆
調教師 二ノ宮敬宇
競争成績 中央7戦6勝・海外4戦2勝
GT勝ち鞍 NHKマイルカップ・ジャパンカップ・サンクルー大賞
獲得賞金 376,078,000円 / 3,800,000フラン

レース名 年月日 競馬場 人気 着順 騎手 距離 馬場 タイム 着差 1着(2着)馬
新馬 1997/11/8 東京 - 1 1 的場 D1600 1.39.3 7馬身 (マンダリンスター)
500万下 1998/1/11 中山 OP 1 1 的場 D1800 不良 1.52.3 9馬身 (タイホウウンリュウ)
共同通信杯4歳S 2/15 東京 OP 1 1 的場 D1600 不良 1.36.9 9馬身 (ハイパーナカヤマ)
ニュージーランドT4歳S 4/26 東京 GU 1 1 的場 T1400 1.22.2 2馬身 (スギノキューティー)
NHKマイルカップ 5/17 東京 GT 1 1 的場 T1600 稍重 1.33.7 1.3/4馬身 (シンコウエドワード)
毎日王冠 10/11 東京 GU 3 2 蛯名 T1800 1.45.3 2.1/2馬身 サイレンススズカ
ジャパンカップ 11/29 東京 GT 3 1 蛯名 T2400 2.25.9 2.1/2馬身 エアグルーヴ
イスパーン賞 1999/5/23 ロンシャン GT 1 2 蛯名 T1850 1.53.9 3/4馬身 Croco Rouge
サンクルー大賞 7/4 サンクルー GT 2 1 蛯名 T2400 稍重 2.28.8 2.1/2馬身 (Tiger Hill)
フォワ賞 9/12 ロンシャン GU 1 1 蛯名 T2400 稍重 2.31.4 (Borgia)
凱旋門賞 10/3 ロンシャン GT 2 2 蛯名 T2400 不良 2.38.6 1/2馬身 Montjeu

Kingmambo


1990 / 鹿毛
Mr.Prospector

1970 / 栗毛
Raise a Native Native Dancer
Raise You
Gold Digger Nashua
Sequence
Miesque

1984 / 鹿毛
Nureyev Northern Dancer
Special
Pasadoble Prove Out
Santa Quilla
サドラーズギャル

Saddlers Gal


1989 / 鹿毛
Sadler's Wells

1981 / 鹿毛
Northern Dancer Nearctic
Natalma
Fairy Bridge Bold Reason
Special
Glenveagh

1986 / 鹿毛
Seattle Slew Bold Reasoning
My Charmer
Lisadell Forli
Thong


エルコンドルパサー種牡馬成績 (代表産駒)
代表産駒 主な勝ち鞍等
ヴァーミリアン ラジオたんぱ杯2歳ステークス

エルコンドルパサー兄弟 (代表兄弟)
兄弟 主な勝ち鞍等
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