トロットサンダー |
9戦8勝・2着1回。地方競馬、浦和で圧倒的強さを見せ付けてきた1頭のサラブレットが、中央競馬に転厩してきました。しかし所詮は地方競馬での成績。血統的にも中央の中に入れば明らかに地味。当時はたいして話題にもなっていませんでした。しかしこの1頭のサラブレットが後にマイル王と呼ばれるなど、もちろん誰も思ってもいませんでした。 中央初戦は、日高特別(900万下)。条件戦から再スタートを切った1頭のサラブレット、トロットサンダー。浦和の実績など当てにならない、しかも初めての芝でのレース、10頭立ての4番人気と評価が低かった事も仕方ありませんでした。そして中央初戦のレースは幕を開けました。初めての芝に戸惑ったのか、明らかにいきっぷりが悪い、後方からの競馬を余儀なくされ、4コーナーでもまだ後ろから3頭目、直線の短い札幌では厳しい位置取りでした。しかし後のマイル王は、その片鱗を見せ付けました。メンバー最速の上がりで2着まで追い込み、初めての中央での競馬、初めての芝という事を考えれば上々の内容でした。 中央2戦目は一息入れて、約5ヶ月ぶりの美浦特別。前走の内容から1番人気に支持されたトロットサンダー。芝のレースも2戦目。今度は芝に戸惑う事もなく、好位から追走し、直線に入ると、早めに先頭に立ちました。最後は詰め寄られ、クビ差の辛勝でしたが、中央初戦と比べれば明らかに内容は良くなっていました。 続く初富士ステークスでは、中段から豪快な末脚で一気に先行馬を差し切り、2馬身差の快勝。いよいよ中央のオープン馬達と戦う事となりました。そしていきなり重賞に挑戦する事となり、中山記念に出走しました。 この中山記念には重賞の常連で、後に天皇賞(秋)を制するサクラチトセオーも出走し、断然の1番人気に支持されていました。一方、重賞初挑戦となったトロットサンダーは、単勝12倍の4番人気。レースは、ウインドフィールズが超スローで逃げ、トロットサンダーは後方から。しかしこのスローな流れに先行馬達の脚がまったく止まらず、7着敗戦。重賞初挑戦は厳しい結果となりました。 その後、府中ステークスでは、後に高松宮記念を制する事となるシンコウキング、マイルチャンピオンシップ2着に入るショウリノメガミなど、素質馬が揃っていましたが、その2頭をまったく寄せ付けず、2馬身1/2差の完勝。再び重賞に挑戦していく事となりました。 中央デビュー戦と同じ札幌に渡ったトロットサンダー。札幌記念では1番人気に支持されましたが、勝ったスーパープレイから2馬身1/4差離された7着。続く函館記念でも7着。重賞の壁か?重賞では結果が出なかったトロットサンダーでしたが、一流馬が揃う毎日王冠へ出走する事となりました。 この毎日王冠には、この年皐月賞を制し、日本ダービーでも2着に入ったジェニュイン、そしてサクラチトセオーなど超一流馬も参戦し、厳しいレースになる事は明白でした。人気も6番人気。たんなる脇役の1頭に過ぎませんでした。あいにくの天気で重馬場で行なわれた毎日王冠。トロットサンダーは後方からレースを進め、4コーナーでもまだ後から3頭目。案の定重馬場ゆえ、前の馬が止まらない。それでもトロットサンダーは最速の上がりで3着まで追い込み、重賞でもやれる手応えは掴みました。 毎日王冠後は、アイルランドTに出走。単勝2.3倍の1番人気に推されたトロットサンダーは、人気に応える桁違いの末脚で2着エアチャリオットに3馬身差付ける圧勝。OP特別とはいえこの好内容に、次走はGTのマイルチャンピオンシップに決まり。いよいよマイル王への第1歩を踏み出す事となりました。 このマイルチャンピオンシップは、前走のスワンステークスを驚異的なレコードで圧勝した巨漢馬ヒシアケボノ、セントウルステークスを制したビコーペガサスの2強対決の様相を呈していました。トロットサンダーは4番人気でレースを迎えました。レースは快速馬エイシンワシントンがハイペースで飛ばし、ヒシアケボノが2番手を追走、トロットサンダー、ビコーペガサスは後方からの競馬で直線に向かいました。直線エイシンワシントンの脚が一気に止まると、ヒシアケボノが力強い脚取りで抜け出し、ヒシアケボノの快勝かと思われました。しかし残り100mでヒシアケボノの脚色が鈍ると、外から1頭桁違いの末脚で追い込んできました、トロットサンダーです。ヒシアケボノを一気に抜き去ったトロットサンダーは、レースの上がりを1.3秒も上回る驚異的な末脚で、マイルチャンピオンシップを快勝!GT初制覇となりました。 年が明け7歳(旧8歳)となったトロットサンダーは、東京新聞杯から始動し、クビ差ながら重賞連勝を飾り、京王杯スプリングカップから安田記念のローテーションで、マイルGT連覇を狙う事となりました。 京王杯スプリングカップでは、僅差の2番人気に推され、ほぼ最後方からメンバー最速の上がりを繰り出しましたが、僅差の3着。しかし200m伸びる安田記念では、やはりトロットサンダーでしょうがない、そんな空気も流れていました。 そして迎えた安田記念。去年のマイルチャンピオンシップとは比べ物にならない、近年でも稀に見る豪華なメンバーが揃い、人気も割れていました。出走馬17頭中、この安田記念までに8頭がすでにGTのタイトルを手にし、翌年の安田記念を制する事となるタイキブリザードを含めると、実に17頭の内、半分以上がGTウイナーという、安田記念史上でもおそらく最もレベルの高いレースと言っても過言ではないはずです。そんな中堂々の1番人気に推されたのは、トロットサンダーでした。 レースはヒシアケボノが2番手を離して逃げるハイペース。トロットサンダーはいつも通り後方から直線勝負に賭けました。直線に入りヒシアケボノはいずれ、ばてるだろうと思っていましたが、まったく脚色は衰えず、逃げ切られた!そんな気配も漂う中、タイキブリザードがヒシアケボノに襲い掛かり、さらに大外を廻って明らかに桁違いの末脚でトロットサンダーが飛んできました。1頭だけとんでもない脚で追い込んできたトロットサンダーは、最後タイキブリザードと並んでゴール板を駆け抜けました。写真判定の末、ハナ差でトロットサンダーが差し切った所がゴールでした。このハイレベルな安田記念を制し、マイルのGTを連勝。トロットサンダーがマイル王に君臨した瞬間でした。2着のタイキブリザードは翌年の安田記念を制し、4着のジェニュインはこの秋のマイルチャンピオンシップを快勝。改めてトロットサンダーの強さが際立った安田記念となりました。 すでに7歳(旧8歳)となっていたトロットサンダーでしたが、浦和で9戦、中央で13戦目と、まだまだ馬体は若く現役を続行するのかと思われましたが、マイルの頂点にたったままターフをを去る事となりました。中央のマイル戦では6戦6勝。歴史に名を残したマイル王でしたが、種牡馬としてはこれといった産駒を残す事が出来ず、2004年に静かにこの世を去りました。 |
トロットサンダー | |
生年月日 | 1989,5,10 |
性別 | 牡 |
毛色 | 鹿毛 |
生産地 | 北海道鵡川 |
生産者 | フラット牧場 |
馬主 | (有)有匡・藤本照男 |
調教師 | 津金沢正男⇒相川勝敏⇒内藤一雄 |
競争成績 | 地方9戦8勝 / 中央13戦7勝 |
GT勝ち鞍 | マイルチャンピオンシップ・安田記念 |
獲得賞金 | 364,361,000円 |
レース名 | 年月日 | 競馬場 | 格 | 人気 | 着順 | 騎手 | 距離 | 馬場 | タイム | 着差 | 1着(2着)馬 |
4歳 | 1992/7/1 | 浦和 | - | 1 | 1 | 桃井 | D1400 | 稍重 | 1.28.9 | 0.4秒 | (ワンダースラッガー) |
4歳 | 7/29 | 浦和 | - | 1 | 1 | 本間 | D1400 | 良 | 1.28.8 | 1.8秒 | (マコールビー) |
4歳 | 8/17 | 浦和 | - | 1 | 1 | 桃井 | D1400 | 良 | 1.29.2 | 1.0秒 | (ムサシワンダー) |
若武蔵特別 | 9/8 | 浦和 | - | 1 | 1 | 桃井 | D1400 | 良 | 1.28.2 | 0.7秒 | (ミタカダンサー) |
C1六組C2二組 | 10/10 | 浦和 | - | 1 | 1 | 桃井 | D1400 | 良 | 1.27.2 | 0.7秒 | (シーガルレコール) |
C1四組 | 1993/1/3 | 浦和 | - | 1 | 2 | 本間 | D1400 | 良 | 1.29.4 | 0.1秒 | コスモチュー |
C1四組 | 1/21 | 浦和 | - | 1 | 1 | 本間 | D1400 | 良 | 1.29.1 | 0.3秒 | (ヘイセイソブリン) |
ヒヤシンス特別 | 2/21 | 浦和 | - | 1 | 1 | 本間 | D1600 | 良 | 1.42.9 | 0.1秒 | (イシノハワイアン) |
あやめ特別 | 1994/5/23 | 浦和 | - | 1 | 1 | 桃井 | D1600 | 良 | 1.40.6 | 0.8秒 | (ハシモクロタカ) |
日高特別 | 7/17 | 札幌 | 900 | 4 | 2 | 横山典 | T1800 | 良 | 1.48.7 | 1/2馬身 | タケノクラウン |
美浦特別 | 12/4 | 中山 | 900 | 1 | 1 | 横山典 | T1800 | 良 | 1.47.7 | 首 | (マイネルロカビリー) |
初富士S | 1995/1/21 | 中山 | 1500 | 1 | 1 | 横山典 | T1600 | 良 | 1.33.6 | 2馬身 | (クアドリフォリオ) |
中山記念 | 3/12 | 中山 | GU | 4 | 7 | 横山典 | T1800 | 稍重 | 1.50.8 | 2.3/4馬身 | フジヤマケンザン |
府中S | 5/20 | 東京 | 1500 | 1 | 1 | 横山典 | T1600 | 良 | 1.33.8 | 2.1/2馬身 | (シンコウキング) |
札幌記念 | 7/2 | 札幌 | GV | 1 | 7 | 横山典 | T2000 | 良 | 2.01.8 | 2.1/4馬身 | スーパープレイ |
函館記念 | 8/20 | 函館 | GV | 6 | 7 | 横山典 | T2000 | 重 | 2.03.4 | 6馬身 | インターマイウェイ |
毎日王冠 | 10/8 | 東京 | GU | 6 | 3 | 横山典 | T1800 | 重 | 1.48.9 | 2.3/4馬身 | スガノオージ |
アイルランドT | 10/28 | 東京 | OP | 1 | 1 | 横山典 | T1600 | 良 | 1.33.3 | 3馬身 | (エアチャリオット) |
マイルチャンピオンシップ | 11/19 | 京都 | GT | 4 | 1 | 横山典 | T1600 | 良 | 1.33.7 | 1.1/4馬身 | (メイショウテゾロ) |
東京新聞杯 | 1996/2/4 | 東京 | GV | 1 | 1 | 横山典 | T1600 | 良 | 1.34.4 | 首 | (メイショウユウシ) |
京王杯スプリングC | 5/11 | 東京 | GU | 2 | 3 | 横山典 | T1400 | 良 | 1.21.2 | 1/2馬身 | ハートレイク |
安田記念 | 6/9 | 東京 | GT | 1 | 1 | 横山典 | T1600 | 良 | 1.33.1 | 鼻 | (タイキブリザード) |
ダイナコスモス 1983 / 鹿毛 |
ハンターコム Huntercombe 1967 / 黒鹿毛 |
Derring-Do | Darius |
Sipsey Bridge | |||
Ergina | Fair Trial | ||
Ballechin | |||
シャダイワーデン 1977 / 栗毛 |
Northern Taste | Northern Dancer | |
Lady Victoria | |||
シヤダイプリマ | Marino | ||
ナイトアンドデイ | |||
ラセーヌワンダ 1969 / 栃栗毛 |
テスコボーイ Tesco Boy 1963 /黒 鹿毛 |
Princely Gift | Nasrullah |
Blue Gem | |||
Suncourt | Hyperion | ||
Inquisition | |||
ラ・セーヌ 1956 / 栗毛 |
リンボー | War Admiral | |
Boojie | |||
ラシフォード | アスフォード | ||
ラシモア |
トロットサンダー種牡馬成績 (代表産駒) | ||
代表産駒 | 性 | 主な勝ち鞍等 |
ウツミジョーダン | 牡 | 報知オールスターカップ |
トロットサンダー兄弟 (代表兄弟) | ||
兄弟 | 性 | 主な勝ち鞍等 |
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